「スマートモビリティチャレンジ」インサイドレポート大津・新潟・静岡におけるMaaSアプリ実証実験

経済産業省と国土交通省が推進する
「スマートスマートモビリティチャレンジ」に参画

▪️ BIPROGYの「移動×生活」事業構想を3地域で実践

「移動×生活」事業構想を具現化すべく、大津市、新潟市、静岡市において、各地域の交通事業者、自治体との連携の下、2019年度および2020年度のスマートモビリティチャレンジ事業に参画しました。スマートモビリティチャレンジ事業とは、経済産業省および国土交通省が、新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化を目指し、地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促すプロジェクトです。

3地域におけるスマートモビリティチャレンジ事業(以下、実証実験)において、実証実験用のMaaSアプリ提供、およびアプリを通して得られたデータの利活用検証等を実施しました。

▪️ 目的は地域公共交通の利用促進とまちなか振興

当社は、MaaSアプリは単に“移動手段”を統合するだけでなく、“移動目的”まで含めた統合サービスとして提供する必要があると考えています。今回の実証実験においても、MaaSアプリによって、お出かけや買い物、健康改善といった移動目的となるサービスと公共交通移動を促すサービス(お得なデジタル乗車券やルート検索等)を組み合わせることで、公共交通利用やまちなか消費などの行動変容に繋がるかを検証しました。

▪️ 実証実験用MaaSアプリについて

このアプリには、デジタル乗車券、ルート検索、スポット検索、クーポン等の共通の機能があり、それをベースに地域ごとのブランディング(例:新潟市の場合は「りゅーとなび」)やご要望に対応しながらカスタマイズして、各地域へご提供しました。

アプリイメージ

大津市、新潟市、静岡市の3地域において、2年間で計5回の実証実験を実施

▪️大津市における実証実験について

大津市版MaaSでは、移動の利便性向上と地域経済の活性化を目的として、観光型MaaSと住民型MaaSの取組みを並行して進めています。2019年度と2020年度には、 大津市様、京阪ホールディングス株式会社様、京阪バス株式会社様と共に、大津市内および比叡山エリアにおける実証実験を各年1回(計2回)実施しました。

これらの実験では、MaaSアプリ「ことことなび」にて、鉄道・バス・ケーブルカー・ロープウェイが一日乗り放題の企画乗車券を販売するほか、観光スポットや近隣店舗等の立ち寄りスポットやクーポン情報等を提供し地域内移動の利便性向上、誘客・周遊の促進について効果を検証しました。

観光型では、商品・サービス、エリア情報の一元的な提供やユーザー像および利用状況の把握が可能となるとともに、今後の利用者数の増加やサービス向上に向けた運用や与件を認識することができました。

住民型では、大津市民へのインタビュー等を元に、アクティブシニアという具体的なペルソナ(利用者像)を定義し、健康増進アプリ「BIWA-TEKU」と連携させたデジタル スタンプラリー“健康”ウォーク&ライドキャンペーンを実施し、ウォーキングと公共交通を組み合わせることで、一定の利用促進効果があることを確認できました。

出典:https://www.pref.shiga.l/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/314942.html

▪️ 新潟市における実証実験について

2019年度は新潟交通様と共に2020年3月1日から一か月間、新潟市住民向け MaaS アプリ「りゅーとなび」を展開し、新潟交通の路線バスが乗り放題の一日乗車券、レンタサイクルやオンデマンドバスの乗り放題チケットを販売。また、ルート検索機能、および市内商業施設等で利用できるクーポンを提供し、行動変容を促すための実証実験を行いました。

出典:https://ryuto-navi.com/

2020年度は新潟交通様、エヌシーイー株式会社様と共に、2020年12月1日から3カ月間にわたり実施しました。2019年度同様に新潟市住民向けMaaS アプリ「りゅーとなび」を展開し、ルート検索機能および市内商業施設等で利用できるクーポンを提供しました。

「りゅーとナビを使うことで、都心部へのお出かけは増えそうですか?」という事後アンケートでは、アプリを利用したほぼ半数の方から「YES」との回答を頂き、本アプリに行動変容を促す効果がありそうだということがわかりました。

移動データの分析については、エヌシーイー株式会社様にて、りゅーとなびから得られたクーポン利用状況、GPSから得られるユーザーの足取りに加え、交通系ICカード(りゅーとカード)の乗降情報、ETC2.0一般プローブデータ、タクシープローブデータ、駐車場利用データより得られた様々なデータを掛け合わせて分析し、クーポン配布等の行動変容を促す施策の効果を検証、新潟市中心部のさらなる活性化に繋げるための考察、提案をまとめました。

▪️ 静岡市における実証実験について

2020年11月1日~12月25日まで、静岡型 MaaS 基幹事業実証プロジェクト、静岡鉄道様と共に、スマホアプリ「しずてつ MapS!(マップス)」を リリースし、2020 年度しずおか MaaS 実証実験に参画しました。

しずてつMapS!では、静岡市内2地域におけるAIオンデマンド交通との連携サービス、静鉄電車のリアルタイム混雑情報、電車の混雑状況に応じてお得度の変わるデジタルクーポンなどのサービスを提供しました。電車の混雑状況については、主要5駅(新静岡駅、県総合運動場駅、草薙駅、狐ヶ崎駅、新清水駅)のホームにセンサーカメラを設置して、リアルタイム混雑状況と過去の利用状況から算出した快適乗車予報(混雑予測情報)を掲載しました。デジタルクーポンについては、駅構内に設置するデジタルサイネージに表示された二次元バーコードをアプリで読み取ることで、電車の混雑状況に応じたランクのクーポンを取得できる仕組みとして、電車の混雑回避(需要平準化)への行動変容を検証しました。

出典:https://s-maas.jp/

実証実験を通してわかったこと、今後に向けて

▪️実証実験を通してわかったこと

それぞれの実証実験に於いて短期間で複数の事業者が連携出来たことで、MaaSアプリを通したサービスを提供し、満足するダウンロード数やクーポン取得率を達成しました。

その結果、アプリから取得したデータをはじめ、あらゆるデータをかけあわせて分析することで、効果と課題の検証することが出来ました。一方、コロナ下での実施で、利用の伸び悩みは否めませんでした。また、サービスの使いやすさには改善の余地があり、観光客と地元住民の利用をうまくバランス出来なかった等の課題が残りました。

課題の中でも、ダウンロードから利用に繋がらなかったことを反省し、今後より多くの方にサービスを使って頂くために、ユーザー像を明確にしたうえで、使いやすい仕組み作りと、ユーザー層に訴えるお得感が明確に出るような改善をしていきます。また、そのプロモーションにも注力していきたいと考えています。

奏功した点
•アプリで行動変容を起こすというコンセプトの自治体、各事業者、利用者(住民、観光客)への広い認知の獲得
•コロナ下でも充実したサービス、クーポンをラインアップ
•各地で目標ダウンロード数を達成

改善点
•ダウンロードの手間
•登録の煩雑さ
•クーポン獲得方法のわかりにくさ、お得感のわかりにくさ
•施設側でのクーポン利用、確認方法の周知不足
•住民、観光客、年齢層等、ターゲットを明確にし、手法を使い分けたプレゼンテーション、プロモーション

▪️今後に向けて

一連の実証実験では、移動・外出促進というMaaS的な考え方にフォーカスした取り組みでしたが、コロナを経験し、人々の行動様式が変わってきた中で、 今後は地域をどうしたいかという広い視点で業界、業態を超えて、地域全体で同じ課題に取り組む姿勢がより重要になってきました。それに対応するためには、これまでの実証実験アプリでは不十分であり、UI/UX、機能、アーキテクチャも含めシステム全体の見直しが必要だと考えています。

国内の多くの地域では、人口減少が続く中にコロナによる打撃もあり、公共交通事業が深刻な状況を迎えています。当社は今後も国の事業等を活用しながら、複数地域で同時に「移動×生活」事業の具現化を進め、地域個別のご要望に対応しつつも「共通解」を導き出し、公共交通の維持・発展、まちなか振興に繋がる仕組みを目指して取り組んでまいります。

これからも当社の活動にご注目ください。


L-PASSをもっと知りたい方には、資料をご用意しております。

ご相談いただきたい場合は、お問い合わせよりご連絡ください。

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